それに気付かないふりをしながら
向かうのは中庭へと続く入口。
そこまで来た所で、あたしは袋からスニーカーを取出し履き替えると、そのまま外へ出る。
そして、さっきまで部屋の窓から見ていた木の下まで歩いていく。
辺りは芝生になっていて、その上に落ちている枯葉を踏みながらベンチに座ると、
高橋はあたしの前に立った。
「……何?」
せっかく微妙に雲の間から射している暖かい日差しが遮られるんですけど。
「部屋に戻って下さい」
真面目そうな顔で、シルバーのいかにも頭の良さそうなインテリ眼鏡を掛けた高橋。
その顔に反することなく口から出てくるのもお堅い真面目な言葉。
「やだ」
あたしがあっさり断ると、高橋はムッとした表情をして更に口を開く。
「岡本さん!発作が……」
「煩いな!発作、発作、手術って……ちょっと外に出てるだけでしょ?しばらくしたらまた部屋に戻るから、あんた仕事に戻れば?」
付いてくんなっつーの。
ちょっと外出て空気吸ってるくらいで発作が起きるわけ無いじゃん!



