今までずっと高橋って呼んでたから下の名前、分かんなかったんだよね。



そのままって言うけど……

「かっこいい名前じゃん」



ボソっと呟くように零した言葉に高橋は笑顔で ありがとう と言った。

ふわり、

笑ったその顔を見て思わず本へと視線を落とした。

別に、そんなに嬉しそうに笑わなくても……。



「ってかいつまで本見てるの」



高橋はさっきから時々あたしを見つつも本を見ている。



話題を変える為に言えば、


高橋はまたページを捲った。


「ハマっちゃって……」


その気持ちは凄く分かるけど。




―――いつまでも見ていたいって気持ちになる。





あたし、最近おかしいのかも。




高橋の事、気にしたり。

景色じゃなくて。



こうやって高橋が本を見ながら笑っているのをずっと眺めていたいって気持ちになるんだ。


認めたくないけど。