高橋は早足であたしを追って来ていた。
「……次また大声出したら、あたし全力ダッシュするよ?」
静かに睨み付けながら言う。
あたしの言葉に、ハッと表情が固まる高橋。
グッと口を閉じてあたしを見る。
……よし。
もう大声を出してあたしを止めようとしないだろう。
ダッシュされたら困るだろうし。
偉い偉い。
あたしは高橋の顔を見てニッコリ笑うと、また歩き出す。
……馬鹿な奴。
普通、それでも止めるよね。
手引っ張ってでも逃げれないようにしてから無理矢理部屋に連れ戻せばいいのに。
無理強いしないのか、そんな勇気が無いのか……。
ちょっと考えれば、ダッシュして本当に困るのはあたしだってこと位分かるはずのに。
素直にあたしの言う事を受け入れるまだまだ患者の扱いに慣れてないお医者さん。
からかったりするのには丁度良いけど。
大人しくなったのはいいものの、後ろをついてきている気配は消えない。
背中に感じる視線も。



