「……ハァ。
何処に行ってたの?」
―――病院に帰るとすぐ。
呆れた顔の高橋が部屋へと入ってきた。
「あの人の心配した方が良いんじゃないの?
居ないけど……」
あたしはベッドに座りながら向こう側にあるベッドを指差す。
高橋の事が好きらしいとあたしが勝手に思ってる子。
多分あたしの勘は当たっていると思うけど。
いつもならいるはずなのにベッドは空っぽ。
布団も丁寧に畳まれてる。
「検査に行ってるよ。
岡本さんみたいに病院を抜け出す人なんて居ないんだから……」
「あっそ」
あたしぐらいしかこんな事しないもんねー。
「それより!
携帯に電話をしても出なくて……どうしたかと思いました」
責めるように上から見下ろしてくる高橋。
出なかったから心配した?
あたしは基本高橋からの電話には出るようにしてるから。
「電話があってすぐ帰ろうとしたから出なかった」
あたしは棚から着替えを取り出しながら答える。
「今日は帰ってくるつもりが無いかと思いました」
……は?
あたしってそこまで信用無いの?
「あのね、あたし一応入院してんの。
抜け出しても帰らないって事はしないし」
今までだって病院に帰らなかった事は一度も無い。
どんなに遅くても夕方、18時までには帰ってた。