……それじゃ、

岡本さんが寝るまでは一応ここにいますね。



寝たらちゃんと帰りますから。

そう言いながら高橋はあたしの首元を触って熱を確認する。



普通なら

そんな事しなくて良いから早く帰ってよ



とか

じゃあ朝まで寝てやんない



とか言うかも知れないけど。



今回は熱のせいで頭がぼんやりしているからか、そんな事を高橋に言おうなんて全く思ってなかった。

それよりも。



何故かあたしは高橋の白衣の裾を握り締めていた。

冷たい布の感触。

「……おやすみなさい」



「…おやすみ」


何この会話。



有り得ないと思いながらも、
あたしは何故か今日は意地悪な気持ちが起きてこなかった。

それは。


手術までの高橋の優しさを感じてしまって嬉しく思ってしまったからだと思う……。