姉が、行方不明になった。








姉の友だちである里和さんから電話があったのは、昨日の夜。

『もしもし、栄来ちゃん!?里和です…っ!
紺野 里和[コンノ リオ]ですけど!!』

里和さんの様子がおかしいのには、すぐに気付いた。

『落ち着いて聞いてね!?…来夢が、いなくなっちゃったのっ…!!』
「はい…??」
『だから、一緒に旅行に来て…気付いたらいなくなってたの!!』
興奮気味に、里和さんは続けた。
『財布も携帯も置きっぱなしで…消えちゃったの!
もう3時間も探してるのに…っ!!』

私は、ただ立ち尽くすだけだった。

『もしもし、栄来ちゃん!?栄来ちゃん…!?』
里和さんの声が、耳元で響いていた。

だがその後は、世界から音が消えたみたく静かになった。



私の名前は
山下 栄来[ヤマシタ エイラ]。
高校2年生。

幼い頃、事故で両親を亡くした私は、唯一の家族であった姉.来夢[ライム]に今まで育ててもらった。


「お姉ちゃん…」

机の上の写真の中で幸せそうに笑う姉。


誰にでも優しくて、頭も良く努力家の姉は、私はもちろん天国にいる両親にとっても自慢の存在だった。


そんな姉が、人に心配をかけてどこかで寛いでるなんてあり得ない。

きっと姉は、何かの事件に巻き込まれたんだ。



もしかしたら、もうこの世には…。


そんな覚悟もした。


両手を強く握った私の頬を、一筋の涙が流れた。