「うっはー!やっぱ寒いねぇ!」


依子は手で口を覆い、白い息をハーと吐いていた。
寒いから中で食べようと、あんなに翼と止めたのに、
言いだしたら聞かなくて、
あとで後悔する、それが依子だ。




私たちはてきとうに腰を下ろし、
ご飯を広げた。



「元気そう?あのぼっちゃん」



ぼっちゃん…

翔の家に遊びに行ったときのことを思い出す。
まさかマンガの世界のようなお金持ちだったなんて…
あのときは本当に衝撃だったなぁ



「うん、律義に手紙送られてくる」


嬉しいくせに、とにやつく依子をグーでこづいた。





ーーーーーーー
雪の降るあの日、
バス停で翔に会ったのが最後だった。
旅立つ日、
朝早くに莉奈が訪ねてきた。
相変わらず少し怒った顔で、
本当は誘いたくもないはずなのに、
ただ何も言わずに私を見ていた。


「ありがとう」と一言告げると、
莉奈は駆けて行った。
私は見送りには行かなかった。


バス停で、
私だけを見て、
互いに感じたぬくもり…

あの記憶を最後にしておきたかったから。



向こうに着いてからは、
週一のペースで手紙が送られてきた。
本当に律儀なやつ。


でも、バカみたいに私も返事を書いているから笑えちゃう。