莉奈はだまったまま、何かしゃべりだす気配もない。



不安で高鳴る心臓…




ただごとではない雰囲気……






「莉奈ちゃん…?何か…」






「もう、いないのよ」




「え?」






莉奈はゆっくりと顔を上げて私を見た。
やっぱりいつもみたいな目力はない。目が不安な色で揺れていた。






「もう…日本にはいない……」





私はその次を悟った…上手く…言葉がでない
何が日本にいないのか…誰が…




莉奈は上を向いた。どんよりとしたグレーの空。とっさのことで泣けない私の代わりに、今にも泣きだしそうな空だった。


莉奈はそれだけ言って、
来た道を引き返して行った。



一人取り残される



足が上手く動かなくって、寒くもなくって、ただただ最後に会ったあの日を思い出していた……