咲き乱れる桃の花の天蓋の下、三人の男たちは杯を掲げて、お互いの顔を見つめあった。
「我ら三兄弟、生まれた月日は違えども、いくときは一緒よ。じゃ、カンパーイ!」
杯が打ち鳴らされる。三人は杯に満たされた酒を一気に飲み干した。
時代が鳴らす騒音がこの桃園にだけは届いていないかのような、麗らかな春の日の午後だ。
「兄者、世の中が大変だというのに、大の男が三人もそろって昼間っから飲んでいるとは、いいもんですなァ!」
張飛はうれしそうに空になった杯に酒を注ぎ足しながら劉備に言った。
「そうね。でもほら、俺らどうせアウトサイダーだし、世の中とか関係ないじゃん」
劉備も張飛から酒瓶を受け取り自分の杯に注ぐと、もうひとりの男、関羽の杯にも注いでやった。
「そうかもしれないが兄者、今の帝国の名前知ってる?」
「俺が政治のこととか知ってるわけないじゃん関羽。俺、ただのホモだぜ?」
「知らないのか。漢帝国(おとこていこく)と言うらしいよ」
関羽の説明の後、一瞬の沈黙を挟んで、劉備と張飛は驚きの声を上げた。
「な、なんだってー!」