戦闘開始後、黄巾賊の本陣には前線から伝令がひっきりなしに出入りし、芳しくない情報を司令官に届けていた。
「報告!こちらに突撃してきた敵方の異様な兵4名により、我が方の前線、混乱しております!奴ら、我らの目印である黄巾を手当たりしだい毟り取っております!敵味方の区別がつかなくなって、しっちゃかめっちゃかです!」
「報告!前線、崩れました!ただし敵本隊も、敵味方の区別ができないようで進軍を止めています!最初の、異様な敵兵4人だけが、この本陣を目指し突撃しております!」
「なに!?たった4人でだと!?」
司令官の叫びとほぼ同時、この最重要地点を守っているはずの衛兵たちの数人が、司令官たちの集まる本陣まで弾き飛ばされてきて、その場に打ち倒れた。
「まさか、本当に来たのか!?」
司令官の驚愕の声を掻き消すように、野太く低い三つのバスと、淀んだ一つのソプラノのハーモニーが本陣内に響き渡った。
「被ってる子はいね~か~ 手で剥かれたい子はいね~か~!」
そこに現れた、攻撃的な化粧をした大男三人と、男の一人に肩車された異様な目つきの少女に、黄巾賊司令部は気勢を完全に飲まれた。
「あ・あ・あ・・・た、退却ーッ」
黄巾賊司令官のくちから、悲鳴にも似た号令が放たれた。
戦いは、どう動いていいのか分からなくなった公孫瓚本隊を置き去りにしたまま終了を迎えたのだった。