彼女の肩が小刻みに震えているのを、オレは見逃さなかった。




それに、やっぱり何かに怯えてる瞳をしていた。




過去に何かあったのかもしれない……。



聞いてはいけないことなのかもしれない。





「どうして桜が好きなん?」



口が先に動いていた。


すると、彼女は目線を地面に向けて……。





「それは……見ていたら和むからかな。桜の花びらは散ってなくなっていくけど……その瞬間が好きなの。散るからこそ、桜は綺麗なんだよ?」



散るからこそ花は綺麗……か。




確かにそうかもしれない。





桜の花びらはオレの心を象徴しているのかもしれない。





手に入れたものは、あっさりと手放して去っていく。




桜の花だって、咲いたら散っていく。





オレは……今まで、大切なものを捨てていたのかもしれない。




「……純粋で綺麗」



そう彼女は呟いた。




純粋で綺麗……か。





時々、前髪を掻き分ける彼女の指先は繊細で……釘付けになっていた。





ちょっとした彼女の仕草が、こんなにもオレの心をくすぐるなんて………。




女とは関わりを持ちたくはないけど、彼女は特別な気がしてきた。




彼女のことを知りたい……。