雲の隙間から、遥か彼方にゆらゆらと月が淡い光をはなっていた…。
今日はなんだか、落ち着かない。頬を撫でる風さえも、薄気味悪かった。
なかなか寝付けず、九つ程の少年はただじっと月を眺め、丘の上に立ち尽くしてた。少年の赤毛が風になびく。足元一面には、夜にしか咲かないと言われる名も無き花が咲き乱れていた。花が青白い光沢を放ってくれるおかげで、若干、薄暗さをまぎらわせてくれた。
少年が感傷にひたっていると、ふと、背後から人の気配を感じた。
「眠れないのか??」
同じ赤毛で、顎髭をはやした40代後半の男が少年にそっと話し掛けた。