「国の武士も庶民も皆旅立っています。
私だけ行かないわけにはいきません。秋桜様もその事はおわかりになるでしょう?
だから、最終的にはこうして送り出してくださる。」
「そんなこと…っ―――!!」
「本当にあなたはやさしい心をお持ちです。」
秋桜から体毎視線をそらし、再び背を向ける。
「さぁ、もう秋桜様もお行きください。あなたの”力”を必要としている人が大勢います。ここで、私と話している場合ではないでしょう?」
「…………………。」
「秋桜様?周りをよくご覧ください。
……国の者は皆傷つき苦しんでいます。
あなたには皆を救える”力”があります。」
その言葉に秋桜は再び周りに視線をやった。
周りには、血にまみれぐったりとした人が多く、国の女達がその介抱を懸命に行っていた。
また、動かなくなった男に泣きつく女や小さな子供の姿もあった。
「あなたには、皆の傷を癒す”治癒の力”があります。皆を救えるのはあなただけなのですよ?」
「こんな力…。
欲しくなどなかった。そもそもこんな力さえなければ、このような戦は…………。」
「そんな事をおっしゃってはなりません。
皆あなたの力を尊敬し、感謝さえもしているのですよ?」
「そんなことないっ!!私が…、私さえいなければ、皆こんなに傷つく必要はなかった………っ!!
あの時、”あの人”の要求を受け入れてさえいれば―――っ…。」
「それは違いますよ、秋桜様。」
静かに直月は秋桜の言葉を遮った。


