それを直月は優しいまなざしで見る。


秋桜は、女の子にしては少し身長が高めで、腰まである髪は黒く艶があるように見える。
小さな顔に大きな目は綺麗な二重。綺麗というよりかわいい雰囲気の姫だ。
口調は若干男勝りなものの、そのかわいらしい容貌と身分には関わらずどの人とも接することで、国の者からは多大な人気を得ていた。


そんな秋桜を、直月はしっかりと目に焼き付けるように見やり、目を閉じた。


「直………?」


若干の赤みを帯びた頬に片手をやり、秋桜は目を瞑った直月の方を見る。


「そろそろ…、私も行ってまいります。」

「―――っ!!」


一気に現実に引き戻された秋桜は息を呑んだ。


「どうか、ご無事でいてください。
そして……、どうか幸せにお過ごしください。」

「―――っ、直!行くなっ!!」

「………秋桜様。」

「行かないでくれ!!行ったらお前もきっと……」

「………………。」

「ここに、そばに居てくれ?
ずっと……、ずっと…。」

「それはできません。」


ゆっくりと目を開いた直月は秋桜に言った。


「お願いだ……、なおっ…。」

「……今日は、泣いてばかりいますね?姫様。」

「…誰のせいだと思ってる?」

「はは、私のせいだと思ってもよいのですか?」

「茶化すな、まじめに話してる。」


少し上目遣いで直月を睨みつけながら秋桜は言う。


「最後くらい、笑顔が見たかったのですが……」

「――っ、最後なんて言うな!!お前は生きて帰ってくるんだからな!!」

「行くことを認めてくださるのですね?」

「……ぁっ。」

しまったと思ったときにはもう遅かった。
そのときはすでに直月が行く事を無意識に認めてしまっていた。