「……なお?」


直月の突然の謝罪に、秋桜は戸惑った。


「……私には、その資格はありません。」

「…っ、何を言う!?名前を呼ぶのに資格なんてっ……!!「私は…っ!!」」

「……私は、この国を選びました。」

「…………っ。」

「それに、私はただの一介の武士。それも、元はただの売れない陶器職人。あなたとは身分も違うのですよ?…秋桜姫様。」


そう言って腕の力を緩めた直月の顔を見上げた秋桜は、直月の少し無理に作った笑顔を見た。


「それに、あなたには特別な”力”もある。
私が気安く話しかけていいはずがないのですよ…。周りで誰が見てるやもしれません。」

「わたしの”力”など関係ない!!
それに、わたし達は幼い頃からずっと一緒にいたではないか…。それに―――っ。」


そこで秋桜は一瞬周りに目をやり、一度堅く目を瞑ってから続けた。


「………今は、周りの者はほとんどわたし達をみていないではないか。だから、お前もこうして抱きしめていてくれるのだろう?」


秋桜の言葉に、今自分がしていたことを思い出した直月は、ぱっと腕を離した。
その行動に、秋桜は少しぷくっと頬を膨らませる。
そんな秋桜を見た直月は、先ほどと違って、目を細めた本当の笑顔になった。


武士にしては短めに整えられた髪の毛。元は職人だったとうかがわせるその腕は見た目は細いものの力は強い。爪は丸く少し土がつまっている。
身長が高く、顔は少しつった一重の目に、高い鼻、薄い唇でぱっと見た瞬間は少し怖い感じの印象を受ける顔だが綺麗な顔つきだ。


そんな直月の笑顔を見て、秋桜の顔は膨れっ面から頬を赤らめた顔に変わった。