「な「その呼び方はいけませんよ、秋桜様。私の名は、直月(なおつき)とお呼びくださいといつも言っているではありませんか。」」


再び秋桜の言葉を直月は遮った。
その声は穏やかなものであったが、秋桜は強く反論をする。


「なぜだ!?なぜそんな事を言う?
何も悪いことなどしていないだろ?お前を”直”と呼んで何が悪い?
お前もお前だ。なぜ、わたしの名を”秋桜様”などと呼ぶのだ!?以前の……、以前の様に―――っ…」


秋桜の言葉はそこで途切れた。
不思議に思った直月が秋桜の顔を仰ぎ見ると、顔を俯かせ、下唇を噛締める秋桜の姿があった。


「秋桜様―――。」

「違う………。」

「秋桜様――。」

「違う!違うっ、違う!!」

「…………。」


困ったように眉を八の字にした直月に、瞳にうっすらと涙を浮かべた秋桜は言う。


「……っ。どうして、以前の様に、”あき”って呼んでくれないの―――?」


そこまで言うと秋桜は大粒の涙をぽろぽろと流しだした。


「……………。」

「呼んでよぉ…。あきって呼んでよ…。っ……。」

「……………。」

「お願いだよ…。直―――――っ。」


秋桜がそう言ったと同時にふわりと暖かいぬくもりに包まれた。
それが抱きしめられているからだと気づいたのは、直月に更に強く抱きしめられている時だった。
男にしては、少し華奢に見える直月の腕は見た目以上に力強いものだった。


「―――っなおぉ…っ。」

「―――申し訳っ…、ございません………っ。」


腕に力を込めながら、直月は言った。