「あ!
あと、カップル割チケットの方は退園されるときは必ず2人でチケットを見せてくださいね。
1人だけだと、外には出れませんので。」


券売のお姉さんはそう言って入退場のゲートを指差した。


「では、楽しんでくださいね。」


「はいっ!」

あたしは白石くんの服の袖を引っ張り、ゲートに向かう。


あたしはハイテンションすぎて、


「らーららーら動物園♪
らっほっほいの動物園♪
らーららーら動物園たら動物園やっほーい♪」


という意味のわからない歌詞を名曲(皆様のご想像にお任せします)のメロディーに乗せて歌う。


「動物園はなぜ~楽しいのでしょーか♪
動物園はなぜ~カップルに優しいの♪
教~えてパンダさん~
教~えて白石くん~
教えて~日野原動物園♪」


スキップしながらも歌い終えると、周りのお客さんに拍手された。


…………やばい。
今のあたし、完全にイタい。


あたしは恐る恐る後ろにいる(はず)の白石くんを見る。


白石くんはハイテンションのあたしに引きずられぐったりしていた。


「し…白石くん?」


「あ…頭いひゃい…。」


白石くんがくたっと地べたに座り込む。


どうしよう…。

焦るあたしにギャラリーの中にいた1人のおばさんが一言こういった。


「ライオンに引きずられたチキンみたいやんね。」


そして、何事もなく去っていった。

そのおばさんの着てるTシャツの後ろには、『チキンが食べたい』とプリントされていた。


あたしは…
吹き出しそうなのを必死に堪えた。