「……はぁっ…。
わりぃ、待った?」


「ぜ…全然!!
今来たところ。」


「じゃあ…行くか?」


そう言って差し出す手をためらいながらも握り…


「………うんっ!」


最上級の笑顔で笑うあたし…………。

……。



「…………の。
南野!!」



横で怒鳴るのは紛れもなくあたしの彼…


じゃなかった。


「渡部さん…。」


なぜだ。
ココは白石くんがあたしの妄想を実現させるとこじゃないの!?


「…気合いいれてんなぁ、お前。」


あたしのことをジロジロみてから渡部さんは興味なさそうに言った。


気合いいれますよ初デートだもん!!

めくるめく初デートだもん!!

文句あるかこらぁ!!


とか渡部さんを睨みつつそう思ってると、前方から走ってくる人影が見える。


……あ、白石くん。
走ってる姿もカッコいいわー。


「………はぁっ…。
ごめ…待った?」


白石くんはあたしの方に向かってきてそう言った。


…こ、これは……!!
あたしの妄想が、若干…いや、かなり!!
現実になってるよ!!


これは、チャンスよ、南野莉子。
あの妄想台詞を言うのよ南野莉子ー!!


「……ぜ」


「おっせーよてめぇ。
ほら行くぞ。」


…………台無しだわ。
渡部くん、こればっかりは空気読んで欲しかった。