渡部くんに連れてかれたのは、屋上の入口の前だった。


「…ふぅ。
お前らの前なら、敬語いらねーよな。」


言葉は乱暴なのに満面の笑みは崩さない渡部くん。


…俳優だ…この人。
恐ろしく演技上手いよ。


「…白石、南野。」


急に名前を呼ばれ、ビクッと肩を震わすあたし。

……あ、白石くんもだ。


「お前らに言いたいことがある。」


渡部くんはそう言って焦げた携帯を取り出す。


「メアドを交換しろ。」


…………ん?


「それだけ…?」


期待を込めてそう言ったものの…


「んなわけねーだろ。」


という素っ気無い返事。


あたしと白石くんはがっくりうなだれながらも携帯を取り出した。


先に白石くんがメアド交換し、その次にあたしが交換していた。


その時。


「あ…!」


携帯を見てなにかひらめいたらしく、白石くんが声を漏らす。


もしかして…
あたしのメアド知らないのに気付いたのかな?


そんな淡い期待は次の一言で砕かれました。


「……今日、週間少年ランプの発売日だ!」


…彼女のメアドより週間少年ランプか!


あたしもメアド知らないこと数十分前に初めて気付いたけど!



………今さらだけど
こんなんで大丈夫なのか、あたし達。