「え?」


その男の子は何故かこっちを見て首を傾げている。


「え?」


あたしはプチパニックになり聞き返す。


「今、なにか言いませんでしたか?」


その男の子は低い声でそう言った。


なにか言いませんでしたか………?


あたしは男の子の言葉を頭の中で何度もリピートさせる。


なにか…

言ったのか…

あたし…


…………


「あぁぁあ!!」


あたしは思わず叫んでしまった。


男の子は驚いた顔であたしを見る。


無意識だったけど、あれが口に出てしまっていたのかもしれない……。


『え、芸能人ですか?』


絶対そうだ。

そうに違いない。


そう思うと、急に恥ずかしくなってきた。


「い……いい今のは、
忘れてください!!」


いたたまれなくなってあたしは走ってその場を逃げようとした。


「え、あ、ちょっと!!
忘れ物してますよ!!」


男の子はそう言いながらあたしの置き去りにされかけたカバンを掴んだ。


「あ、あ…ありがとうございます!!」


あたしはカバンを受け取ってすぐさまダッシュした。