「ったく…
んなこと心配する前にニワトリどうにかしろ。」


渡部くんは首を埋めて眠っている白い物体を顎でしゃくった。


……やっぱり鶏になってんだ。


悪い夢だという可能性は木っ端微塵に吹っ飛んだ。


「…どうしたら戻るかなぁ、白石くん…。」


ぼんやりとしたまま、独り言のように呟くあたし。


「…ってか、大丈夫なのかな、いろいろ。
家に帰るわけにもいかないな、親に鶏になりましたって言っても信じてもらえないだろうし。」


渡部くんは哀れみの表情を浮かべて白石くんを見ている。


「…鶏になったからって、死んじゃったりとか、しないよね…?」


最悪なことを考え、不安になってきたあたしは、渡部くんに懇願するように尋ねた。


「…わからない。」


渡部くんは一点を見つめながら、ボソッと呟く。


…そりゃ、そうか…。


なんとなく暗い雰囲気になっていると、突然渡部くんがなにか閃いたように立ち上がった。


「そうだ…アイツなら分かるかも。
莉央…俺の元カノだけど…アイツ呪術者なんだ。」