「え……。」


いくら目を凝らしても、鶏しかいない場所から、白石くんの声が聞こえた。


…ってまさか…
透明人間にでもなったの!?
あ…これもファンタジーか。


じゃあ、まーさーかーの?


「はっ…コレ!?
コレが白石くんなのっ!?」

そう言った瞬間、鶏はパチッと目を開けて、口を開く、


「たっ…助けて…」

と。
日本語を…呟いた。
白石くんの声で。


「ギャー鶏がしゃべったぁぁぁあっ!!」


あたしは慌てて渡部くんがいるところに戻る。


「……にっ…にわ…し…しら……しゃ…しゃべっ…ギャーっ!!」


パニックで上手く状況を伝えられないあたしをみて、渡部くんはさらに眉をひそめる。


「……俺も見に行く。」


私の脇をすり抜けスタスタと歩いていく渡部くん。


鶏の目の前まで行き、興味津津につついたりしている。


そして…。


「うぉおっわぁぁあっ!!」


奇声をあげながら、もうダッシュで戻る渡部くん。


全ての状況を察したらしい。