「……………

は?」


開いた口がふさがらない。

アホみたいに、あんぐりと口をあける、あたし。


そして隣りにいる渡部くんも、眉をひそめて由宇くんを見ている。


「お前…。
幻覚症状あんのか?
病院、行こう。」


渡部くんは携帯を取り出し、救急車を呼ぼうとする。


「ち…違う!!
白石は、マジで、鶏になったんだよ…俺の、目の前で…ほら、アレ…。」


そう言って指差す先には、白い物体が見えた。


…あたしは恐る恐る、その物体の前までいく。


…立派な赤いトサカに、真っ白な体。
普通の鶏より、少々小さくて、まるで縫いぐるみのようだ。


「………んなアホな。」


呆れて、ため息が漏れる。


人間が鶏になるなんて、ファンタジーじゃないんだから。
リアリズムにいこうよ。


さて本物は何処にいるかなと辺りを見回していると、突然、


「…うぅ………。」


白石くんの低い声が、鶏のいる方から聞こえた。