時刻は午後4時……ちょうど今頃は、夕飯のおかずを買いに出かける主婦の姿がちらほらと見受けられる時間だ。


ここにも、夕日を背にして小さな娘の手を引きながら近所のスーパーへと向かって歩く母親の姿があった。


母親の名前は、朧 月夜(おぼろ つきよ)。まだ幼い娘の歩幅に合わせ、ゆっくりと歩く仲の良さそうな母娘は、楽しそうに歌を歌っている。


「♪波平くわえたノラネコ~追~っかけて~♪買い物~忘れた~♪ゆかいなサザ~エさん♪」


「あら…ちょっと違ったかしら?」


正しくは、ノラネコがくわえたのは『波平』ではなく『お魚』で、サザエさんが忘れたのは『買い物』でなく『財布』である。


「お母さん~お腹空いたね~♪」


「そうね~。今日の晩ごはんは何がいいかな~♪……あれ?チビちゃん、その手に持っている物はなぁに?」


娘が見覚えの無いノートのような物を持っている事に気が付いた朧は、首を傾げて娘に尋ねる。


「これはね~♪お絵描き帳だよ♪」


「こんなの家にあったかしら…ちょっと見せて♪」


娘から受け取ったそのノートを開いてみると、そこには、五線紙に様々な音符が書き連ねてあった…


「???…」