それから葵が毎日俺に付きまとって、曲の行く末をしっかり監視した。
「♪虫けらどもが集う~…」
「バカ!」
「痛ぇ!」
その衝撃で譜面がヒラヒラ舞う。葵はそれを拾って説教した。
「何、この暗い歌詞。そんなんじゃ、治る病気も治らなくなっちゃうよ。それに詩織、五歳だよ?こんな、不健康な歌聴かせられるわけないでしょ。やり直し!」
「何でだよ~、マジ勘弁して」
「もう弱音吐くわけ?」
「だって、俺には荷が重過ぎるよ」
「まったく、情けないなぁ。詩織は、あんたの歌が聞きたいって言ってたよ。ワタルお兄ちゃんのギターが聴きたいって。そしたら、手術受けてもいいって。手術を受けなかったら、詩織は長く生きられないの。なのに、詩織泣いて嫌がるのよ?もう私でもお手上げなのよ」
葵は額を触って、参ったという顔をしてから俺を見た。
そんな目で見つめられても。
任務。
『手術を嫌がる詩織ちゃんのために曲を書いて歌い、手術を受けてもらうこと』
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