「あのー、ストーカーみたいなことやめてもらえます?」
「あら、いつ私がストーカーを?」
葵は部屋に入るなり、バタバタと慌てて俺の横を通り過ぎて、よかった~と言ってギターを保護した。
「それ、返せよ。壊すんだから」
「い、や」
「何なんだよ、お前は」
「アンタに任務を与える」
「は?」
葵は、ギターを弾くフリをして、まっすぐ目をみて言った。
―…
ミュージシャンになりたい、なんて小学生ン時、作文に書いた『将来の夢』も同然だ。
でも、高校生くらいまでは、努力すればいつかはなんて、甘チャンな考えで行動出来ちゃったから。
だから俺は、実家を出て、音楽系の専門学校に入学した。親父には拳で殴られ勘当されるわ、母ちゃんには泣かれるわ。
それでも俺は家を出た。ギターケースを背負って。
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