俺は考えた。
頭を抱えて考えた。
トイレで。狭いキッチンで。ベランダで。いつものコンビニで。
電車の中で。いつもの道で。葵の視線を感じる中で。
実家からの留守電を聞きながら。意味もなくついているテレビを見ながら。
毎日、毎日、毎日。
相棒を抱えて、譜面を見つめて。
それでもやっぱり、頭の中は真っ白だった。
期限は、残りわずか。
俺は、ベランダに出てタバコの火をつけた。
涼しい風が吹いている。吐いた煙が目にしみた。
前の通りには、ランドセルの小学生たちが下校している。
子供達をみて、ふと詩織ちゃんの顔が、ぼんやりと浮かんだ。
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