「俺、たこ焼き食べたい。」


教室からゆっくり歩きながらバザーをしているところまで行く途中、尚輝は突然言った。


「はいはい。」


適当な返事をしながら、私もたこ焼き買おうかな、なんて考えていると、尚輝がいきなり私の手を掴んだ。


「は?ちょっと…。」


私が最後まで言い切らないうちに、尚輝は走り出した。私の手を掴んだままで。

しんどい。

いつになったら止まるのかわからない尚輝にイライラしながらも、手を掴まれた時にドキッとした自分を恥じていた。

こんな奴に、一瞬でもドキドキするとか…一生の不覚だ。

そう思っていると、尚輝が周りを見回して、止まった。


「…はぁ、振り切った。」


訳が分からない尚輝の言葉に、苛立った顔を向ける。


「あ、ごめん。」


さらりと謝った尚輝に、更に苛立ちを覚えた私は、文句を言ってやろうと口を開いたが、声を出す前に尚輝に理由を話されてしまった。


「先輩にサボってたの見つかりそうだったから…。」


まだ少し上がっている息で、尚輝はそう言った。


「サボるなよ、バカ。」


こいつがサボったせいで、私は貴重な体力を消耗したと思ったら、イライラが膨れ上がった。