水に燃え立つ螢

母は25歳で私を産み、43歳で亡くなった。


胃癌と正面から向き合い、最後まで泣き言を言わない強い母だった。
私の祖母も、胃癌で亡くなったらしい。

物心ついた頃から、私は母と二人きりの家族だと分かっていたし、祖母も遺影の中しか知らず、父や祖父の不在を不思議と思えない程、母の愛を一身に受けて育った。

母には色んなことを教えられた。

その母の口癖は


「自分を大切にしなさい」


母の人生を知ることもなく、また、母は母でしかなかった。
一人で私を育てた母に、伝えきれない感謝だけが私に残った。


私が生まれてから亡くなるまで、母は自分の人生を私に話すことは一度もなく、私の前で泣くこともなかった。


強く優しい母。

母子家庭ではあったが、自慢の母だった。