水に燃え立つ螢

「俺、腹減った」

「だから、いつもでしょ?」

「飯食わねぇ?」

「いいけど」



入ったことないラーメン屋で、懐かしい味の素朴なラーメンを食べた。

店の隅に小さなテレビが設置されていて、そのテレビからは笑い声が聞こえていた。

一番テレビの傍にいた年配の男の人は、ビール片手に笑っている。


あの人にとって、『今』は尊重すべき時間ではないんだろう。
胸の鼓動が、痛いなんて感覚もないんだろう…



『無』な他人が羨ましい。




「行くぞ」


流星の言葉に席を立ち、勘定を済ませた流星と店を出た。


「ご馳走さま」

「おう」




雨は小降りになり、ワイパーの動きも緩くなる。


やはり、あの夜景の山だった。
いつもなら車を停めて歩いて登った山道を、今日は車で登った。


駐車場に車を停めた流星は、暫く窓の外を見つめ煙草に火をつけた。


「今日は試練はないのね」


二人でクスクスと笑って




笑って

黙った。





「俺は、お前以上に大切なものなんてないんだ」



流星は煙を一気に吐き出した。




私は薄く開けていた窓に、煙が吸い込まれる様子を見ていた。
雨粒が重なって流れていく。

時間は動いている。