水に燃え立つ螢

お姉さんは強い人だった。
私が与えてしまった苦しみを、『苦』だとは言わない。

「過ぎたことなのよ」

そう言って笑った。




お姉さんと別れ家に戻った私は、流星に電話した。案の定、仕事中で電話に出なかったが折り返し掛けてくるだろうと、敢えて留守電にも残さずに…


夕方、流星から電話がくる。



「会いたいの」

「俺も」

「あの駅で待ってるわ」






約束した時間より早めに着いてしまった私は、始まりの場所に立ち、空を仰いだ。



此処で流星と出逢い、此処から動いた恋。




梅雨らしい雨雲が、暗くなりだした空を一層暗くしていた。



終わること。

それは

始まること。





クラクションの音がして、目の前に流星の車が停まった。
車に乗り込み、滑り出した景色がピントを失っていく。



「元気…か…?」

「うん」


何日かぶりの会話。



フロントガラスに大粒の雨が落ちてきて、大きな音を立て始めた。



「何で雨なんだよ」


流星は顔を顰めて言った。





分かる…

何処を目指しているのか、あの駅に着く前から分かっていた。