水に燃え立つ螢

母の遺したお金。これは使えないお金だ。
流星にすら話す気はなかった。


入籍を待たず一緒に暮らし始め、流星の一日を把握する日々が過ぎた。
流星は呑みに行かなくなり、真っ直ぐ帰ってくる。
今まで、誰に対しても何かするという行為を避けてきた私だが、さすがに何もしないわけにもいかず、かと言って嫌でもなく、思っていたより馴染んだ。



流星の家に挨拶に行った日のことだった。

流星のお姉さんも三人の子供を連れて来ていた。とても柔らかい表情の、とても女らしい人。

時任は何故、他に走ったのか不思議だ。


流星のご両親は人懐っこい人柄で、初めて会う私に他人の壁を感じさせないご両親だった。



流星の家を後にして、帰宅中の車の中。

流星は、私の手を握り締めた。


「幸せにするからな」


流星の横顔は、きっと今までで一番、強い顔だった。

急に愛しさが込み上げてきて、運転する流星の左頬に、ありったけの気持ちを込めてキスをした。



『愛してる』