水に燃え立つ螢

秋の終わり、母は病床で静かに息を止めた。

意識は殆どなかった。


だが、息が止まる寸前、母は薄く目を開けて、眼球を動かしていた。


「此処にいるよ!母さん!」


そのまま目を閉じ、二回呼吸をしてから、母は逝った。




二日後、葬儀の日。
母が亡くなってから片時も離れない流星が、母の棺の前で泣いていた。

声は掛けなかった。



親戚は一人もいない。

店の客や近所の人ばかりで、葬儀は静かに終わった。



骨になった母。


もう、肉体が存在しない母。


もう、見れない母。




堰を切って溢れる涙に、歯止めをつけず、流れるだけ流した。


着替えていた流星が私の泣き声を聞き、隣の部屋から走ってきた。


「一人で泣くな」


流星は私を抱き締めて、いつまでも髪を撫でた。










季節は本格的に冬に変わり、骨まで凍みる風が街を吹き抜けた。

23歳・冬。


母の遺した言葉は、私を静かに変えて行くこととなる。