水に燃え立つ螢

病院に着いて母の病室を前に、一瞬足が竦んだ。

「どした?」

流星が覗き込む。

「ううん…」



笑っていよう
笑っていよう…

繰り返す決意も新幹線で聞いた母の伝言が、決意を遮っていく。


「入るぞ?」

流星が引き戸を開けた。


「…流星くん」


母の声が聞こえた。



流星を追い越した時、母は体を起こして驚いた。


「凛ッ!」

「…母さん」

「元気だったの?」

「うん」


笑顔で。


できるだけ笑顔で答えた。




『ねぇ…流星、私、笑えてる?』




母は最後に見た時から、体が半分くらいなくなっていた。


「痩せすぎだよ!」

「何だか食欲なくてね」

「全く…心配させないでよ」

「ごめんね」

「胃潰瘍だって?」

「そうなの」


目尻の皺を、更に深くして母は笑った。



いつの間に…そんなに年を重ねたんですか?

母さん…いつの間に、そんなに小さくなったんですか?





『母さん…ただいま』