水に燃え立つ螢

あの日のキス以来、流星は駅のホームや学校で私を待った。


「凛~」


素通りする私を、流星はいつも座って眺めている。



私の家は、流星と出逢った駅から3つ目の駅で、其処からバスで家に帰る。

家まで歩ける距離だが、学校帰りは大抵バスに乗る。


さすがに、流星も3つ目の駅までは来ない。


何時から、流星の中に私が存在したのか…私には初めて見る顔で、何しろ突然災難が降ってきた。

正直、迷惑なことだった。

周囲に彼氏だと勘違いされることも、いつも一緒にいると思われることも、心臓がむず痒く、この頃の私は、常に眉間に皺が寄っていた筈だ。

座り込む流星を無視し、電車を乗り換えて、珍しく座った日のこと。

「よいしょ…っと」

流星まで私の隣に座った。

「アンタ、ストーカー化してるよ」

「俺の女になったら、ストーカーになんねぇよ」

「絶対ならない」

「何で『絶対』なの?」

「アンタが軽いから」

「俺の女になったら軽いの止めてやるよ」

「そういう言い方が嫌いなの」

「俺のこと好きになるよ」

「絶対ならない」



流星は一人で楽しそうに笑っていた。


『ホント迷惑』


「携帯教えろよ」

「絶対、嫌」


ポケットに両手を入れて、ケケッと笑う流星。
半袖の日焼けした腕と、浮かび上がる血管を睨む様に見ている私。


この男は、よく知りもしない私の、何が良くて俺の女になれと言うのだろうか。
私が、どう生きているのかも知らないで、よく言えたもんだと、逆に感心もする。

いつも鬱陶しくて、いつも機嫌の悪い私が、隣にいた。