水に燃え立つ螢

「じゃあ…また」

時任は、そう笑って背中を向けた。


愛とか分からないけど、あの時はそれなりに好きだったんだと、背中を見ていて思った。


思ってから私も背中を向けて、歩き始めた。



数歩歩いて、時任が呼び止めた。



「凛ちゃん!」


一瞬、柵に囚われそうで恐さが走った。
振り向くと、また道を与えてしまいそうで、躊躇いだけが私を包んでいた。

足を止めたまま、振り返ることもできずに立ち尽くす私は、時任の目にどう写っていたのだろう。



気が付くと、背中に時任の温もりを感じた。



「僕は、本当に凛ちゃんが好きだったんだ」


嘘を言ってないのは良く分かる。

だけど、もう二度と受け入れてはいけない。





「私はね、もう二度と、不倫なんかしないの」




腕の力をふっと抜き

「すまない…」

と身体を離した。



「家族を大切にしてね」

「頑張るよ」

「時任さんも幸せになってね」

「凛ちゃんも」



今度こそ、永遠のサヨナラだ。