水に燃え立つ螢

「…突然どうしたの?」

動揺が隠せない時任。


素直に、理解して欲しかった。

我が儘でも何でも、
『分かった』
と言って欲しかった。


そんなの、自分のエゴだ…。



「会ってから聞くよ」

「もう…無理なの…」

「凛ちゃん…電話は卑怯だよ」




「私…愛してなかったの…」




時任は黙った。



いつまでも黙っていた。


そして…静かに言った。


「他に…好きな人が?」

「違う…」

「僕は、凛ちゃんを幸せには出来ないから…仕方ない……と思うよ」

「時任さん…今まで…」


『ありがとう』

と言いかけた。


が、止めた。


「来月そっちに戻るんだ」



時任が帰ってくる。



あの街に、時任と流星が揃う。





私は、二度と、帰れない。


帰りたくない。



「ありがとう」



時任が言った。




時任は昔のように、

『別れない』

とは言わなかった。



こんな、電話で終わる簡単な関係だったんだ。



電話の後、改めて一人だと身に染みて、泣いた。