水に燃え立つ螢

流星の声は、何処までも追ってきた。


『何で走ってくるんだよ!』


私は逃げるしかできない。

今更、どんな顔を…。

今更…。



その内、流星の足音が近付いてきて、私は諦めた。


「しつこいんだよ!」

「逃げんな!」

「赤ちゃん、放ってくんなよ!」

「俺んじゃねぇよ!馬鹿!」

「知らねぇよ!」

「凛ッ!」



抱き締められた、窮屈なほどの流星の腕の中で、私は一瞬、目が眩んだ。
懐かしい温もりは、一瞬で奥深くに届き、快感に似た白い波が、胸の中で大きくなる感覚に陥った。

そのまま甘えそうになったが、時任が浮かんだ。



「離せよッ」

「あれは姉ちゃんの子供だ」

「関係ないし」

「黙ってろ」

「離せってば」

「何処にいるんだ?」

「何でアンタに教えなきゃならないの?」

「俺を待ってただろ?」

「馬鹿みたい…」

「俺しか無理だって言ったろ」



昔と変わらない流星。


流星に頼れない自分。

今まで…
現在…
汚い…
汚くて流星も汚しそうだ。


「凛…話すことがあるんだ…」

「…」

「俺の姉ちゃんは…時任さんの嫁だよ…」



私は、どんな顔を、していたんだろう…。

流星の顔が、見えない…。


私は、どんな罪を、犯したのだろう…。

流星の言葉が、聞こえない…。




私は…
私は…どれだけ愚か者なのだろう…。