水に燃え立つ螢

実家で登録してある私の住所を、色んな意味で面倒なので、いっそ今の街に変更することにした。

久しぶりに地元へ帰ったのは、成人式後だった。
成人式前日に、母から電話があったが、本当にバイトが入っていたので、結局、母の希望を消してしまった。


市役所で転出届を出し、

「暫くお待ち下さい」

と言われ、愛想ない長椅子に腰を掛けて待った。


カウンターの中で、忙しく作業する職員を眺めては、すぐに退屈になり、携帯で時間を確認したりして、時間の隙間を埋めようとしていた。

……ふと、気が散った。


いや…散ったのではなく、気が行った。



白い布に包まれた赤ちゃんを抱いた家族が、何かの手続きをしていた。


『出生届か…』


私にはほど遠い未来図で、自分の現在と比べると、少し胸が痛んだ。


それでも、幸せそうな家族から目が離せなかった。



『流星…』



赤ちゃんを抱く人は、間違いなく流星だった。



『結婚…したんだ』


何、この感情は…。
何だろ…凄く悲しい…。



私は思わず顔を逸らす。


名前を呼ばれて席を立ち、転入届の説明をうわの空で焦って聞いた。


『だから、この街は嫌なんだ』


足早に去ろうとした時、


「凛ッッ!」


流星の声がした。



振り向けない。
振り向けないんだよ…。



だから…。

だから、放っておいて…。