水に燃え立つ螢

街は強い日差しを纏い、木々の隙間からは、夏の匂いを含んだ太陽がアスファルトを照らしていた。
木陰や太陽を交互に感じながら、何かを学ぶ様に強いられた学校へと向かう。

駅からの道を、殆ど紫外線に晒した肌は、この夏には、また黒く染まる。
美白を心掛けていても、夏はほんのり小麦色になるのが私。
爽やかではない風を感じ、そのまま空を仰いだら、焦点が定まらず、バランス感覚を失い、思わず目を閉じる。

遮られた視界に、一瞬不安を覚え、慌てて髪をかきあげた。


「危ないよッ!」


入学してからの友達、ユカに左腕をめいっぱい引っ張られ、体重の芯が抜けたようにぐらつく身体。


「前見て歩かなきゃ!」


ユカの強張った視線の先、つまり私の足元には深い溝があった。

そのまま首の後ろで髪を止めていた右手で、今度は髪を直しながら、ユカを見て微笑んだ。

「ありがと」


「最近、様子変じゃない?」


「普通だよ…」




最近の私は変だった。
最近だけではないのが私だが、近頃は特に、頭の中に住むもう一人の自分が、行き先を見失い何度も何度も、何かを叫んでいる様な感覚があった。
上手く説明できないけれど、自分の存在の意味が分からない…と言ったら、近い感覚だろうか…。

彼氏が欲しいとか、恋がしたいとか、そんなレベルの存在価値ではない。


何か別の、何か大切に思える様な、何かが抜けていて、それが何か分からない為に、とても落ち着かないのだ。



高校最後の夏を迎えようとしていた。

バイトに学校に友達。

そして、繰り返すばかりの普通の日々。



私が生きた証は、どうやって残るのか毎日考えていた。誰かの記憶に残るつもりはない。
そういう意味ではなく、何か、残す必要があると、強く思っていた。