水に燃え立つ螢

「何でいきなり家なの?」

「他にねーじゃん」

「付き合ってないし」

「まぁな」



何か話があるはずなのに、全く話そうとしない。
私を見ることもなく、セブンスターに火をつけて、静かに吸っている。
私の目の前には、500mlのコーラのペットボトル。全て飲む自信がない為、開封せずに放置した。

何の為に、電車に乗らず此処にいるのか、分からなくなっていた。


テレビの情報番組を、本気で見ているのか、見ていないのさえ分からない。

コーラがしっとり汗をかき始めた頃、携帯が鳴った。



私の携帯だ。


流星は、テレビを見たまま動かない。



時任からだった。



『出れない』


そう思った時、


「電話だろ?出ろよ」


流星が言った。



「…もしもし」

「凛ちゃん?」

「うん…」

「明日帰るんだ。今日も来れる?」


流星を見た。

また煙草を吸っていた。


「…はい」

「じゃ、待ってるね」



携帯を閉じて、立ち上がった。

「私、行くね」


流星は無言だった。


鞄を持ち、部屋の扉に向かった時、流星が扉を押さえに来た。


「何処行くの?」

「関係ないじゃん」

「行くな」

「何も話さないでしょ?」


息が詰まりそうで、苦しくて、逃げ出したいだけの私。



汚いだけの私。

そうよ、私は今からまた、あの男に抱かれに行くの。

大きく息を吸って、覚悟のような、決別のような、そんな意識を持った。