水に燃え立つ螢

「…凛?」

私は無性に悲しくなった。

時任との関係を、本物のように扱ってきた。決して、奥さんより愛されているわけではなく、奥さんほど愛しているわけでもないのに。

求められると、必要とされているようで、嬉しくもあった。

帰り際にお金を払う時任。

それで済ませてきたのは、この私だ。

愛があるなら、お金など要らないと言ってきただろう。



愛してなんかなかった。

愛されてもなかった。



私が快感を求めたように、時任も密やかな快感を求めただけだ。



認めたくなくて認めなかった事は、明らかに真実として私の心に存在した。

傷つかない為に張った網は、結局、自分を傷つける道具の一部になった。



「流星…私、変だ…」

「変じゃねぇよ。俺の好きな女だよ」

「…救いようのない馬鹿な女よ」

「俺を好きになれ」



流星は手を繋いで、私の歩みを止めた。

「俺は、ずっと見てきたんだ」

流星の向こうに街灯があって、流星の顔が見えない。


「お前の寂しい顔も、お前の欠けた笑顔も」



流星。


軽い言葉は何処にもなかった。



軽いのは、私だった。
流星を軽いと思った自分こそが、何より軽い。自分の感覚だけを信じたが、善悪のラインすら引けていない、途方に暮れるべき馬鹿だ。