水に燃え立つ螢


最愛が2歳の頃だったか、

『ママ』と呼ばず
『パパ』と言った日があった。

勿論、私は教えていない。


その時ほど、流星を求めた日は後にも先にもない。

屈託ない笑顔の、意味不明な言葉の羅列の中、きっと、最愛には最愛なりの感情があったのだろう…

知る術なく
知れるわけなく

最愛の『パパ』は、切羽詰まった空間にコダマの如く響いた。



貴女には、苦労を背負わせたかもしれない。

貴女には、涙が付き纏うかもしれない…


私から産まれた小さな命は、父親のいない環境を受け入れているかに思えた。


『早く大人になって、早く流星の話をさせてね』


目指した場所は、最愛の心だった。



入園式、卒園式…

入学式、卒業式…


季節はゆとりを与えず、豊かさを与えず、巡り巡った。


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流星の話はできないまま、いつの間にか大人になった最愛。

貴女が知った時、私を責めるのだろうか…

弱さ故に、逃げたなどと責められるのだろうか…



最愛、15歳の夏。

「どうして私にはお父さんがいないの?」



貴女の真っすぐな瞳は忘れない。