水に燃え立つ螢

「凛…好きだ」


流星はそのまま、唇を重ねようとした。




私はさっきまで、時任に抱かれていた。


白い波に飲まれた。

声も上げた。

「挿れて」と言った。

共に果てた…。



流星と……無理だ。



例え私が望んでも、許される行為ではない。



「…やめて」



流星を振り払い、一人で歩き始めた。




「何を抱えてんだ?」


後ろで流星が言った。


「お前さぁ…楽に生きろよ」

「何言ってんの?」


苛々して振り返った。


流星は笑っていた。



「何なのよ」



電車で10分ほどの地元の駅も、歩けば遥か彼方。

爆音を上げる車に追い越されながら、深い眠りに就く街を流星と歩いた。

真夏とは言え、この夜だけは肌寒く、身体だけではなく、心も風邪をひきそうな気分になる。
振り返らなくても分かる。
其処に、側に、流星がいる。

時任は、こんな風に私を送るだろうか…。

時任は、お金を払うことにより、罪悪感から解放されているだろう…。


私は、あの得難い快感の為に、何度、身体を開いたのか。


愛とは違った。

だけど、愛して欲しかった。

愛してもいないのに、愛して欲しいなど、どこまでも傲慢な自分に、抗ってはみたものの、苦痛を伴う思考は、すぐに闇に消えた。

そう、必要とされていると、信じていた。


信じていたかった。