診療時間外の産婦人科は、ひっそりと静まり、上の階から赤ちゃんの泣き声が響いていた。
『陣痛』は間隔が短くなっている。
病室に荷物を置いて、服を着替え診察してもらうと、そのまま陣痛室へと移動した。
斜め前のベッドには、既に陣痛に耐えている人が、母親らしき人に励まされながら、唸り声を出していた。
不安が襲う。
一人なんだと、実感する。
実感が溢れて、呼吸が乱れる。
分娩室に移動を促され、陣痛室の隣の部屋へ看護師さんと向かった。
「誰も…付き添いの方はいないの…?」
痛みに集中していた全てが、看護師さんの言葉で隙間ができた。
「私、一人なんです」
恥じることではない。
結婚していなくても、母がいなくても、
『一人きり』は
私が選んだ生き方だ。
「そう、頑張りましょうね」
看護師さんの笑顔に不安が解れ、勇気が一気に湧き出した。
分娩台に上がって5時間。
ひたすら痛みに耐え、先生の声と看護師さんの声に呼吸を合わせ、産声を耳にした時、ようやく安堵感に包まれた。
『産まれてくれてありがとう』
小さな命に
『最愛』と書いて
『もあ』と名付けた。

