水に燃え立つ螢

悪阻の時期を越え、ようやく安定期に入った頃、家から遠くないスーパーの駐車場で流星を見掛けた。

奥さんとベビーカーに乗った女の子。

流星は何処か翳りを含んだ顔で、ベビーカーを押していた。



『幸せ…ではないの…?』


思わず駆け寄って、抱き締めて、



「貴方の子供が此処にいるの!」



と告げてしまいたかった。

足を止めたのは、奥さんの笑顔だった。


何も幸せではないとは限らない。
そう…奥さんの笑顔は幸せそのもだ。


ふいに視線を落とし、流星に背を向けた。




もう、本当に傍にいない…

もう、絶対に…


流星の温もりを思い出して、熱くなる胸には、すぐに諦めの風が吹いて、私をより孤独にさせた。



今を一緒に生きれなくても、同じものを見て生きていけなくても、私の心には流星との思い出が詰まっている。




これが、流星を見た最後だった。