水に燃え立つ螢

流星の肌の温もりが、いつまでも私に残った。


あの日に着ていた服には、流星のクロームの匂いが染みていて、私は洗濯すらできずに、流星を想う日は必ず、服を抱き締めていた。


やはり、不眠の症状が表れ、食事をきちんと取らない状況になっていた。





生理の遅れに気付いた時、湧き上がる感情が、見える光景を変えた。


『妊娠』


自分の身に起こるなど、いつ、誰が予想しただろう…



市役所へ行き、母子手帳をもらう。妊娠の実感が湧き、胸が温かくなる。


母子手帳には、父親と母親の名前や血液型の記入欄があり、父親が空白になることに何の躊躇いもなかった。



『未婚の母』



世間体など、何も怖くなかった。

ただ、ひとつ。

この子からの質問は、言葉に詰まるだろう…



「どうしてお父さんがいないの?」



いつか、話せる時が来たなら、話そう。



私の愛した人。

私の全てだった人を。




初めて、この目で見た赤ちゃんは、小指の先ほどの小さな塊だった。


検診で産婦人科を訪れる度、モノクロの命が見れる。




流星が注ぎ込んだ命。

流星の血を継ぐ命。


私にとって、これ以上の支えなどない。


例え流星と会えなくても、例え叶わぬ想いでも。



流星と生きた証と、私が此処に居る証と。
それが揺るがないなら、全てで幸せだと言える。


モノクロの小さな命は、確実に寿命を持ち、生命の始まりを私に教えた。



私もこうして育まれたんだと。



形は違えど愛は存在し、それは失くした愛の代わりとなり、また、私の命も繋いだ。