水に燃え立つ螢

いつもの毎日の、何気ない日だった。

店の引き戸が開いて、そっと顔を覗かせた女。



「凛!」



お前に本当に良く似ていた。髪の隙間から見えた、力強い茶色の瞳。

お前を好きになって、お前を追いかけてた時に戻ったと、錯覚した。



店の隅に男と二人で座り、俺は何度も確認した。


『凛じゃねーよな?』




お前には悪いが、あんなに若くないかと何だか笑えた。

初めて来た客だから、お前に良く似ていたから、俺は話しかけてみたよ。



「母を!母を覚えていますか…?」












凛…


お前は何処まで、何を貫き、俺だけの幸せを望んだんだ?




違う…

俺らは一緒にいるべきだったんだ。



あの日の選択が、後悔を越えた後悔で一気に押し寄せた。




誰と結婚していても

誰と暮らしていようと



凛、お前には生きていて欲しかった。