水に燃え立つ螢

流星は、掴んだ手首に力を込め、階段とは逆方向に向かっていた。


「ちょ…電車ッ!」


「うるせーッ!家まで送ってやるよ!」


引っ張られるまま結局、駅を出てしまった。

もう諦めた。

何が何だか分からないが、もう最終には乗れない。
流星の手を振り払い、掴まれていた手首を撫でた。


流星は黙って歩いている。



その流星の後を歩く。



「彼氏いんの?」

「は?」


何故今になって、その言葉なのか…。
流星が何を考えているのか、全く分からなかった。


「彼氏いんのかよ」

「いないよ!」




「俺を好きになれよ」

「ならないってば」

「俺しか無理だ」

「何の自信なの?」

「お前を幸せにする自信」



幸せって何よ…。

だいたい、何で幸せにされなきゃならないの?


私は、今でも不幸ではない筈だ。


其処に、何の証もなくても。

必要な時に、呼べなくても…。



寂しくなんか…ない。
自分で決め、自分で選び、自分で抱かれに行く。時には、自分で服を脱ぎ、時任の快感の為に動く。

こんな私が、誰に幸せにしてもらう価値があるだろうか。


「凛…俺の女になって、世界一幸せになれよ」


流星のキスを、頬に受けた。



私は泣いていた。




何故…一瞬で…。

溶かしてしまうんだろう…。


私はきっと、死んだら地獄行きだ。
流星のキスを、頬に受けることさえ、大罪だからだ。