水に燃え立つ螢

掴みきれそうで、掴みきれない。

お前は予測不可能な女で、俺は気を揉んだ。


軽い気持ちで触れてはいけないと分かっていたし、覚悟の上で声を掛けたが、お前にしてみれば降って沸いた虫みたいだったはずだ。

俺はお前の真実を知っていて、お前は俺のことを何も知らない。

最初から時任さんの義理の弟だと打ち明けていたら、お前はどうした?


きっと、自分で追い込んで、追い込まれてた。


俺が好きになったのは、純粋に『凛』という女。その女がたまたま不倫していた。相手はたまたま姉貴の旦那。

素直に笑うことも不器用で、だけどその笑顔を見たくて、俺が傍にいてやりたくて、傍にいたくて…。



お前は自分を汚いと言ったが、お前はいつもキレイだったよ。

外見ばかり気にする、そこら辺の女と違って。



初めて夜景の山に行った時、また会えなくなると思うと本気で拉致してやりたくなった。
何処かに閉じ込めて、お前を守っていけるなら犯罪者にだってなれる。




あの日、隣にいたお前の目には街の灯りが映っていて、お前と知り合えたことを心から嬉しく思った。

若かったあの頃、自分の気持ち以外、お前に誇れるものもなかったが、俺がお前を幸せにするんだと信じていたよ。





あんな風に、お前を永久に失う運命だとは、露知らず…。